農家民宿竹の元/穏やかな一日。何も予定の無い日を作ってぼんやり時間を過ごす。

竹ノ元のお父さんとお母さん。お父さんは照れてなかなか写真を撮らせてくれなかったが、
帰る時、やっと一枚だけ撮らせてくれた。

「分かり難いでしょうから、外に出て待ってますから」携帯電話の向こうから竹ノ元のお母さんの優しい声。決して、道が分かり難かったのではない。高知市から伊野の町を経由して 1 時間少々、ほぼ平坦で快適な道。多分この辺りと見当はつくのだが、看板がなく、どの家なのか分からなかっただけ。
そして、教えられた坂道を登りかけて、見上げると、お母さんの姿があった。 促されてキッチンに上がると、コーヒーや手摘みのお茶やスイカが次々に出てくる。 察するところ、相当早くから、出迎える準備をしていたようだ。お母さんが淹れるお茶の香りに誘われて、お父さんが顔を出す。穏やかな一日が穏やかに始まった。

  お母さんが畑に野菜を獲りに行くというので付いていく。広い畑ではない。家は斜面を切り取った平地にゆったり建っているが、畑は段々にあちらこちらに点在している。だから、必然的に収穫のためにあっちへこっちへと移動することになる。さらに、一枚の小さな畑に多種多様な作物が育てられているから、その中をうろうろすることになる。うろうろと畑の中を歩きながら、お母さんが話をしてくれる。「これは、ノカンゾウ。この花食べられるの、ご存知?」「あっちはキビ、これはコンニャク、あらあらナスに虫が…」 「これはシオデ。山のアスパラ。そうそう、これは後で…」色々教えて頂いても余りにも多過ぎて覚えきれない。しかし、この小さな畑には何でもあるということだけは分かった。
「そろそろ、ご飯にしましょう」と言われて、囲炉裏の部屋へ行くと、既にお父さんが、鮎や田舎豆腐を焼き始めている。お母さんは、その焼け具合を見て自家製の味噌を塗る。味噌はもう少しだろう、これくらいですよ…柔らかな二人の会話を聞きながら、囲炉裏端に腰を降ろす。ゆっくりと、味噌が焼けて甘い香りが立つ。
静かに日が暮れて行く。
 

囲炉裏で豆腐や鮎が焼けるの見ているだけでも和む.贅沢な雰囲気に思わず頬も緩む。

   お母さんが小学校の遠足で桂浜へ行った話をしてくれる。山を越えて学校に通った話をしてくれる。そんな話を聞きながら、鮎を味わう。昼間見た仁淀川の支流の谷川のさらさらと 流れる景色が浮かぶ。旨いと声を漏らすと、お父さんが目を細める。お母さんが、その顔を見て穏やかな微笑を浮かべる。
いつしかお腹も心も満たされていく。
DATA
Vol.008
農家民宿 竹の元
住所 高知県吾川郡いの町上八川丙 4932
 
問合

088-867-3579

 
市町村データ
いの町(いのちょう):石鎚山系の山岳地域から仁淀川下流域まで
いの町マップ いの町  
http://www.town.ino.kochi.jp
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Vol.007 上ノ加江漁業協同組合