Vol.1 ゆずの村のパン屋さん

ゆずの花
市川 堅太・結衣さん Ichikawa Kenta & Yui
有機にこだわる馬路村に共鳴
「どうして、わざわざ人口が千人くらいしかいないような村でパン屋なのかと、よく聞かれます」と楽しそうに市川堅太さんは笑う。市川さんの店「ゆずの花」は、パン職人の夫婦ふたりで経営。北海道から移住して、開業してまだ数カ月。では、北海道の出身かと思えば、ご主人の堅太さんは埼玉県、奥さんの結衣さんは福岡県の出身。「ボクが知らないうちに、彼女が申し込んでいたんですよ…」今度は、結衣さんが笑う。結衣さんは、馬路村農協が求人ネットに出していたパン工房の経営者募集の情報を見つけ、堅太さんに内緒で申し込んでいたのだった。
「そうこうしていたら、採用になってしまって…」というが、2人は採用になってしまったからという理由で馬路村移住を決意したわけではない。田舎暮らしに憧れていたのでも、小さな村の小さなパン屋さんを目指したのでもなかった。馬路村の農協組合長と、じっくり話し合った結果だった。実は、馬路村のパン工房は、これまで2度経営者が変わっている。良い話だけではなく、厳しさも理解した上での決意だった。そして、夫婦には一つの夢があった。「最終的な決め手は、馬路村が有機栽培にこだわった村だということを聞いたからです」という。堅太さんも結衣さんも、長年パン作りにたずさわり、いつかは理想のパンを作りたいと考えていた。馬路村なら、できるかもしれない。夢は、一気に実現に向け動いたのだった。
田舎暮らしよりパンが大変
「本当においしいパンが作りたかっただけで、馬路村に憧れてとかいう訳ではないので…」と申し訳なさそうに笑う。予備知識は皆無。逆にそれが幸いしたのかもしれない。馬路村での開業は、ただ自身のステップアップのためと言い切る。その潔さが気持ちいい。「だけど、ここだけの話、やはり田舎は大変で、材料の仕入れもひと苦労です」という。やはり、堅太さんの頭の中は、パンのことで一杯のようだ。市川さんのパンは、国産小麦を使い、手間と時間がかかる低温長時間発酵にこだわっている。仕込みは毎日、午前2時30分から。馬路村で一番の早起きだ。
気負わず、ゆっくり
「ヒマな時は、村の路地とかを歩いています。楽しいですよ」と結衣さん。店にはイートインのコーナーも設けられているので、自然に、農作業を終えた人たちが集まってくる。常連さんが、時々、野菜などをプレゼントしてくれるのも嬉しいという。本当にゆっくりと時間が流れている。なるほど、これなら、じっくりとおいしいパン作りに専念できそうだと納得。
DATA
ゆずの花
市川 堅太・結衣さん Ichikawa Kenta & Yui
営業 火曜日と第一、第三月曜日以外毎日営業中
住所 馬路村大字馬路
市町村データ
馬路村(うまじむら):ゆず加工品で村全体をPR
 
http://www.inforyoma.or.jp/umaji

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