一見、普通のおむすびである。玉子焼である。ところが、これが実にうまい。その噂が噂を呼んで高知県の片田舎にありながら、1日におむすび1千個、玉子焼300本以上、土日にはその2倍以上を売り上げる。「嬉しいですね。家庭で食べているようなふだん着の味に人は感動してくれるのかな。人を動かしたり、喜ばせたりするのは高価なものでなくてもええんやなと実感しました」。そこには常に労をいとわず、客のニーズに応え続けて来た小さな店のまじめな生き方がある。直樹さんは千葉県の大学卒業後、アルバイトをしながら教師をめざして勉強を続けていたが、母の病気を機にUターンを決意。教師になる夢と都会暮らしをたたんで、家業の『ショップたけざき』を継いだ。それから8年、売り上げは2倍近くに伸びた。「高知に帰って来て、やっぱり地元はええなあと思います。それにぼくは教師よりは商売に向いちょったのかもしれんですね」と笑う。 |