Vol.10 夢はどんどん膨らんでゆくピクルス屋一年生

川谷 活心さん Ikumi Kawatani
ここまで6年
「大学は、農学部ではなく人文です。きっかけは、北海道の牧場でアルバイトをしたことなのですが、牧場を始めるには資金が無く、農業なら出来るかもしれないと考えて、まず、無農薬有機をやっている山下農園の研修生になって、気が付いたら 6 年も経っていました」川谷さんは、話をしながらも、過去については多くを語らない。ただ、前だけを見ている。
 
「確かに、6 年もやっていると、自分なりにこうしてみたい、違う方法も試してみたいということも、たくさんありました。実際、この一年で試したこともあります。失敗したこともあります。だけど、農業はそれだけではありません。作ったら売らなければならないということです。これは、独立して気付いたのですが、自分には売るセンスがなかったのです」だから、過去など振り返る暇などないというように笑う。山下農園は小量多品種生産で、消費者への直接販売を基本としている。農作物は、作れば勝手に売れていくというものではない。それは知っていたが、センスがないことに独立してみるまで気付かなかったのだと言う。
ピクルス
「売るセンスはないのですが、自分が料理が好きなのでピクルスを作ろうと思ったのです。唐突ですけどね。いろいろな人との出会いの中から、考えることもありました。しかし、一番は、同世代の人たちの食生活の問題です。何も作れないような狭いキッチンでコンビニの弁当を温めるという場面で、自分が作った野菜を食べてもらうのは難しいでしょう。でも、ピクルスなら。そう思ったのです」とはいえ、まだ始まったばかり。
家も、やっと落ち着いたばかりだが、既に、川谷さんの頭の中は、これからやるべき作業のリストで一杯になっている。野菜のピクルスだけではなく、鶏を飼って卵のピクルスも作りたいと考えている。牛も一頭飼ってみたいと考えている。新しい畑の構想もある。
「以前は、自転車に夢中だったのですが、最近、自転車より農業のほうが面白くて…、どんどん面白くなるんです農業は」愛車を納屋から出しながら、屈託なく笑ってサドルのホコリを拭った。川谷さんの笑顔から、思わず笑顔がこぼれるような味のピクルスを想った。
DATA
高知大学卒業後、山下農園の研修生となり2008 年独立
川谷 活心さん Hiroshi Chiba
市町村データ
土佐町(とさちょう):西日本最大のダムを有する水源の町
黒潮町 黒潮町  
http://www.town.tosa.kochi.jp
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