土佐料理 刀舟家(とうしゅうや)
高知市帯屋町アーケードの南、帯屋町公園の北側にポツリ、風流な建物がある。まるで京都の先斗町にある建物のようだ。100年近い古民家を改装して作られた「刀舟家」(とうしゅうや)。ここで料理を作る62歳の吉田一雄さんの人間味も、また魅力あるものだった。刀舟家がここに移転オープンして7月で丸一年を迎える。それまでは7年程高知市追手筋でお店を出し大勢のお客様を喜ばせ、それから場所をかえ中水道町で一日一組だけの懐石料理を楽しんでもらうお店にした。それは予約を断る毎日だったとか。その後、娘夫婦という料理の世界の跡継ぎができたので、一年前から現在の場所に移しての営業となった。
「料理で一番大切なもの、それは水なんです。ダシを取るにしてもいくら最高の鰹節と昆布を使っても、水が良くないと意味がない」と、まず水の話になったが、高性能の浄水器を設置し、こだわる吉田さんだから、食材も儲け度外視の時もあるとか。魚介類に冷凍物、養殖物は一切使わない。野菜も吟味して取り寄せている。すべて手づくりのため仕込みに追われるが、先付け一つとってもその仕事ぶりが判かるので、次の料理が楽しみになる。
まずは先付けの美しさに酔う。
「もうこの歳になったから、店への遠慮もせんと、自分の好きな料理を作るしかない(笑)。高知は魚にしろ野菜にしろ素材は良いが、料理になるとそれに頼って、創作する技術が足らんねえ。先付け一つとっても見た目の楽しみがいるんでしょう。料理はイメージなんで、それを大切にしていますよ」。休みの日には美術館で鑑賞したり、生け花の展覧会を見に行ったりと、美しいものを見ることで感性を高めているという。そんな積み重ねが、美味しく、手の入った美しい料理を生み出すことになるのだろう。そして料理を盛る皿へもこだわる。
県外の方にも喜ばれるもてなしの心。
 アーケード街や大橋通りに近いという立地や口コミで、県外からのお客様が多いという刀舟家だが、吉田さんはそんなお客様をとても大事にしている。「高知は観光地であっても、そんなに見るところが多い訳じゃないし(笑)。皆さんが美味しい食事を期待していますよ。そういったお客様に満足して頂ければ、旅の良い思い出になりますからね。先日も北海道の方がふらっと入ってきて料理を楽しんで帰りましたが、後からお礼のお手紙が届きました。県外の方に恥ずかしいものは出せないでしょう。高知の飲食店は美味しいんだ、と思われたいので」。
鰹のオリーブ焼き 1,950円
また、吉田さんは鰹にこだわり、仕入れた鰹が良くない時は使わない場合もあるし、刺身等にしないで、他の食材と合わせて工夫された料理にする場合もあるという。高知のイメージは「鰹のタタキ」であり、最近は「鰹の塩タタキ」が流行っているが、お店では「鰹のオリーブ焼き」を勧めている。これは鰹の血合いの部分を取り、脂の最も乗った部分にコショウで味付けしてさっとオリーブで焼き上げる。鰹の脂の旨さを凝縮し、かりっと焼き上げた食感がある。そして見た目の美しさは洋食のようでもある。中学校を卒業してすぐに大阪や京都で料理人の修行を積んだ吉田さんは、45年というキャリアを重ねてきた。その技の引き出しの多さと、磨かれた感性が、食材をアレンジしていく。親子でつくる刀舟家の料理の技、一度体験して欲しい。
DATA
Vol.011
土佐料理 刀舟家
場所 高知市帯屋町2-1-29
 
 
TEL 088-825-3117
営業 17:30〜L.O.22:30
定休 日曜日
駐車 なし
メニュー ナスそうめん580円
カツオのオリーブ焼き1950円
コース5000円〜
市町村データ
高知市(高知市):人口30万人を有する高知県最大の都市
高知市 高知市  
http://www.city.kochi.kochi.jp/
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