土佐のまんまる【田舎寿司のある風景/高知のうまい飯】

タケノコ寿司は、やや甘めに煮たタケノコの、そのしゃくしゃくとした食感がまた、うまい。
県外の人は珍しがるが、土佐の山里では昔から夏の神祭や田休みには欠かせない寿司の一つでもある。土佐人は何かにつけて寿司を作る「すし文化」の国で、その種類の多さには驚くほどだ。コンニャクやリュウキュウ、イタドリなど、山の幸を使った握り寿司が「田舎寿司」の名で広まったのは最近のことで、土佐の寿司は未だに進化を続けているらしい。海には海の、川には川の、山には山の寿司がある。

南国市白木谷。県内でも知られるタケノコの里に、垣内幸喜さん(82歳)が嫁いで来て60年になる。寿司の作り方は姑から教わった。その寿司を産直市場で売るようになったのは10年ほど前からのこと。 「それまではタケノコが採れる春や、お客ごとの時にうちで作って食べるぐらいで、売ることはありませんでした」という。春は真竹、秋の四方竹も寿司にする。

「自分の背丈ばあ伸ばしちょいて、その先の方から20〜30センチぐらいの穂のところを取ります。タケノコはあとへなんぼでも生えてきますき」。
採ったばかりのタケノコを茹で、水にさらし、塩漬けにして保存する。いわゆるタケノコの漬け物。寿司を作る際は前日に桶から出し、茹でて塩抜きをする。 「夕方煮いて味付けをしちょいて一晩置く。朝温めると味がよう染みらあね」。 同じ寿司でも、地域や作り手によって違い、輪切りにしたタケノコに寿司飯を詰めたものもあれば、垣内さんのように寿司飯の上にタケノコをのせたものもある。
 「昔の人はよう、こんなお寿司を思いついたもんじゃねえ」。台所の裏山は竹林。フードは風土の面白さ。

2009年10月から龍馬空港に田舎寿司が空弁として登場します!


【関連記事】
郷土料理 :土佐の風土と土佐人気質に紡がれた伝統の味
田舎寿司 :知恵と愛情と自然の恵みが生み出した食文化
    次のページへ
   

Vol.02 土佐ジローを味わう