龍馬はしゃも鍋が好物だったというのは有名な話。鶏好きは土佐の遺伝子なのだろうか。高知県は日本鶏の主たる34種のうち、尾長鶏、軍鶏、東天紅鶏など8種が高知原産という鶏王国である。 温暖な気候に恵まれた高知では二期作の余剰米を餌として、地鶏が大事に飼われてきた。かつて、地鶏は暮らしまわりにいて、もてなしに「ほんなら、鶏でもむしっちょこうか」と、それは器用に鶏をさばいたものだった。子どもたちは庭先で、鶏に追いかけられたり、その生命を頂くありがたさを学ぶとともに肉や卵のうまさも知った。
また、食すだけではなく、軍鶏の闘鶏を楽しんだり、土佐のいごっそうたる愛好家たちは品種改良をしながら血統や鶏種を守ってきたのだ。
その情熱が新しき卵肉兼用食用鶏の開発へと傾けられたのが「土佐ジロー」。国の天然記念物である土佐小地鶏を父に、アメリカ産原産のロードアイランドレッドを母に持つ一代雑種の鶏で、 高知県畜産試験場が10年の歳月をかけて開発した。地鶏の「ジ」と、ロードアイランドの「ロ」を取って「ジロー」。誕生から20年を経て、全国にも知られる高知県のスーパーブランド鶏に成長した。
その理由はなんといっても、名古屋コーチンも比内地鶏にも劣らぬ濃厚な肉のこのうまさ。余分な脂肪分がなく、やわらかさと適度な歯ごたえで、噛めば噛むほどうまみがじゅわっと出てくる。鶏鍋やすきやきにし、玉子と一緒に食べればこれまた、とろんとうまい。玉子も濃厚な味で、栄養価は高いが低コレステロール。ぷっくりとした弾力のある黄身は箸で持ち上げられるほど。それもこれも、鮮度のなせる技で、まずは、ぬくぬくのごはんにかけて味わってほしい。 土佐ジローは認定生産者による特定の飼育条件で生産されたものしか、「土佐ジロー」と名乗れない。最近、「土佐はちきん地鶏」という高級肉用地鶏も新たにデビュー。鶏王国土佐はケッコーやる。
郷土料理 :土佐の風土と土佐人気質に紡がれた伝統の味 |